市場には、様々なメーカーから多種多様なデンタルフロスが販売されており、消費者にとっては選択の幅が広がっています。しかし、歯科医療のプロフェッショナルの視点から見ると、中には「これは少しお勧めしにくいな」と感じてしまう製品も残念ながら存在します。特定のブランドを批判するわけではありませんが、良質なフロスを選ぶための「逆引きガイド」として、避けた方が良いフロスの特徴をいくつかご紹介します。第一に、「すぐに切れる、または過度に毛羽立つフロス」です。フロスを使っている最中に、糸がブチッと切れてしまったり、繊維がバラバラになって歯の間に挟まってしまったりすると、非常に不快なだけでなく、清掃効果も期待できません。特に、詰め物や被せ物の縁に引っかかって切れてしまう場合、詰め物の不適合が原因である可能性もありますが、そもそもフロスの繊維の強度が不足しているケースも少なくありません。良質なフロスは、適度な強度としなやかさを兼ね備えています。第二に、「ホルダーの強度が弱すぎるフロス」です。持ち手付きのホルダータイプは非常に便利ですが、製品によってはネック部分が弱く、少し力を入れただけで曲がったり折れたりしてしまうものがあります。これでは、力がうまく歯間に伝わらず、効果的な清掃ができません。特に、噛み合わせが強い方や、奥歯の狭い歯間に使おうとすると、すぐに破損してしまう可能性があります。ある程度のしっかりとした強度を持つホルダーを選ぶことが重要です。第三に、「清掃部分の糸が短すぎる、または張りが緩すぎるホルダータイプ」も注意が必要です。歯の側面に沿わせて「C」の字に巻きつけるのがフロスの基本ですが、ホルダーに張られている糸が短すぎると、この動きが十分にできません。また、最初から糸の張りが緩い製品も、歯垢を効率的に掻き出すことが難しくなります。ピンと張った状態で、ある程度の長さが確保されているかどうかもチェックポイントです。最後に、これは性能の問題ではありませんが、「過度に強い香料や味付けがされているフロス」も、歯科医としては少し疑問を感じることがあります。ミントなどの爽やかなフレーバーは使用感を向上させますが、あまりに味が強すぎると、本来の目的である「歯垢除去」よりも、その味を楽しむことが目的になってしまいがちです。
歯科医がおすすめしにくいデンタルフロスとは