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ドライソケット予防は血餅の絶対防衛から
親知らずの抜歯後、激痛のドライソケットになるかならないかの運命を分けるのは、抜歯した穴にできる「血餅」という血の塊を、いかに守り抜くかにかかっています。この血餅は、単なる血の塊ではありません。それは、剥き出しになった骨を外部の刺激や細菌から守る天然の絆創膏であり、傷が治癒していくための足場となる、極めて重要な存在なのです。この大切な血餅を守るため、ドライソケットになりやすいとされる人も、そうでない人も、抜歯後数日間は特に慎重な生活を送る必要があります。まず、絶対にやってはいけないのが「強いうがい」です。口の中を清潔にしたいという気持ちは分かりますが、抜歯当日から翌日にかけて、ガラガラ、ブクブクと激しくうがいをするのは最悪の行為です。水圧によって、できたばかりのデリケートな血餅は簡単に洗い流されてしまいます。口をゆすぐ際は、水をそっと口に含み、そのまま静かに吐き出す程度に留めてください。次に、口の中の圧力を急激に変化させる行動も厳禁です。代表的なのが、ストローで飲み物を吸う行為です。吸い込む力(陰圧)が、血餅をスポンと引き抜いてしまうことがあります。同様に、麺類を強くすする、楽器を吹くといった行為も避けましょう。そして、血流を良くしすぎる行動もリスクを高めます。飲酒や、長時間の入浴、激しい運動は、血行を促進し、再出血を招く可能性があります。出血が続くと、血餅がうまく固まらず、流れ出てしまうことがあるのです。抜歯後二、三日は、シャワー程度で済ませ、安静に過ごすのが賢明です。食事にも工夫が必要です。抜歯した側とは反対の歯で噛むようにし、おかゆやゼリー、ヨーグルトといった、あまり噛まなくても良い柔らかいものを選びましょう。熱いものや香辛料などの刺激物は、傷口を刺激し、痛みを増強させるので避けるべきです。これらの注意点は、すべて「血餅の絶対防衛」という一つの目的に集約されます。歯科医からの指示を忠実に守り、この数日間を乗り切ることが、ドライソケットという名の激痛からあなた自身を守る、最も確実な方法なのです。