もし数年前に治療した詰め物の付近に痛みを感じたら、まず第一に行うべきは、その歯に物理的な刺激を与えないことです。痛む部位を確認しようとして舌で触ったり、指で押したり、あるいは硬いものを噛んでみたりする行為は、内部の炎症を悪化させるだけでなく、もし詰め物が浮いている場合には歯そのものを割ってしまう原因にもなります。冷たいものがしみる場合は、知覚過敏の可能性もありますが、詰め物の下の虫歯が進行して神経が過敏になっていることが多いため、温度刺激を避けるようにしましょう。また、ズキズキと脈打つような痛みがある場合は、血流が良くなると痛みが増すため、入浴はシャワー程度に留め、飲酒や激しい運動は控えるべきです。夜間に痛みが強くなったときは、頭を少し高くして寝ることで、歯への血圧の上昇を抑え、一時的に痛みを軽減できることがあります。市販の鎮痛剤を使用することは有効な応急処置となりますが、薬が効いている間に「治った」と勘違いしてはいけません。痛み止めはあくまで脳に痛みを伝えないようにしているだけで、詰め物の下で起きている虫歯や細菌感染という根本的な原因を取り除いているわけではないからです。数年後の痛みは、急性的な炎症であることが多く、放置すると歯ぐきが大きく腫れたり、顔の形が変わるほどの炎症に発展したりすることもあります。翌朝には必ず歯科医院に連絡し、症状を伝えて予約を取りましょう。その際、いつ頃どのような詰め物をしたのか、冷たいものと熱いもののどちらがしみるのか、といった情報をまとめておくと診断がスムーズになります。絶対にやってはいけないのは、自分で詰め物を外そうとしたり、爪楊枝などで隙間を掃除しようとしたりすることです。お口の中の細菌をさらに奥へと押し込む結果となり、取り返しのつかない事態を招きかねません。詰め物のトラブルは、数年という時間の経過の中で誰にでも起こり得るものですが、その初期対応こそが、その歯を残せるかどうかの運命を決定づけます。痛みは体からの警報です。その声に誠実に耳を傾け、プロフェッショナルな治療へと繋げることが、結果として最短で苦痛から解放され、再治療のコストを最小限に抑えるための賢明な行動となるのです。
詰め物をした歯が数年後に痛みを感じた時の正しい対処法