親知らずの抜歯後、誰もが経験する痛みとは明らかに質の違う、耐え難い激痛。それがドライソケットの始まりです。しかし、この症状に襲われた時、患者さん自身が「これはドライソケットだ」と断定することはできません。なぜなら、抜歯後の痛みには様々な原因が考えられるからです。したがって、ドライソケットの治療における最も重要かつ最初のステップは、歯科医師による正確な診断を受けることにあります。まず、歯科医師は患者さんの訴えを詳細にヒアリングします。痛みが始まったのは抜歯後何日目か、痛みの種類(ズキズキ、ジンジンなど)、痛み止めの効果の有無、そして不快な臭いの有無など、これらの情報は診断のための重要な手がかりとなります。単なる術後の正常な痛みなのか、あるいは感染を起こしているのか、それともドライソケットなのかを切り分けるための第一段階です。次に、実際にお口の中を診査します。抜歯した穴、すなわち抜歯窩の状態を直接目で見て確認します。正常に治癒が進んでいる場合、抜歯窩は赤黒い血の塊、つまり「血餅」で満たされています。しかし、ドライソケットの場合、この血餅が失われ、穴の中は空っぽになり、白っぽい、あるいは黄色っぽい顎の骨が直接見えている状態になっています。この特徴的な見た目は、診断の決定的な根拠となります。さらに、器具を使ってそっと抜歯窩に触れることで、骨が露出していることを確認したり、レントゲン撮影を行って、骨の中に歯の破片などが残っていないか、あるいは顎の骨に感染が広がっていないかなどを確認したりすることもあります。このように、問診、視診、そして必要に応じた検査を組み合わせることで、歯科医師は正確な診断を下します。なぜなら、治療法は原因によって全く異なるからです。もし単なる術後の痛みであれば、痛み止めの追加処方で済みます。もし細菌感染であれば、抗生物質の投与が中心となります。そして、ドライソケットであれば、これから述べる専門的な処置が必要になります。適切な治療を受けるためには、まず正しい診断が不可欠です。自己判断で我慢せず、「おかしい」と感じたらすぐに専門家を頼ること。それが、辛い痛みから解放されるための最短ルートなのです。
ドライソケット治療の第一歩は正確な診断から