歯科医療の世界では、かつて「白い歯は高い」という常識がありましたが、2014年以降、保険適用の範囲が段階的に拡大され、現在では多くの部位で白い差し歯を選択できるようになっています。この変化を支えているのがCAD/CAM冠と呼ばれる最新の技術です。これはハイブリッドレジンという、プラスチックにセラミックの微粒子を混ぜ合わせた素材のブロックを、コンピューター制御の機械で削り出して作る被せ物です。このCAD/CAM冠が保険適用されるためには、対象となる歯の位置に条件があります。具体的には、上下の小臼歯、つまり前歯から数えて4番目と5番目の歯はすべて保険適用で白くできます。また、下の6番目の第一大臼歯についても、7番目の歯がすべて残っていて左右でしっかりと噛み合っている場合に限り、保険診療で白い被せ物にすることが可能です。さらに、2020年からは上顎の6番目の歯や、条件を満たせば前歯にもこの技術が応用されるようになりました。CAD/CAM冠の最大のメリットは、銀歯のような見た目の違和感を払拭できる点にあります。金属を使用しないため、金属アレルギーの心配がなく、歯ぐきへの着色も起こりません。費用面でも、3割負担であれば1枚の1万円札でお釣りが来る程度の自己負担で済むため、非常にコストパフォーマンスが高い治療法として人気を集めています。しかし、CAD/CAM冠にも弱点は存在します。オールセラミックに比べると強度が劣るため、歯ぎしりや食いしばりが強い人の場合、割れたり外れたりするリスクが比較的高いという点です。また、表面の滑らかさもセラミックには及ばないため、プラークが付着しやすく、日々の丁寧なセルフケアが欠かせません。歯科医院によっては、この素材の特性を考慮し、あえて強度の高い金属冠を推奨することもあります。また、すべての歯科医院がCAD/CAM冠を製作するための設備を持っているわけではありませんが、提携する技工所に依頼することで対応可能な医院がほとんどです。このように、保険診療であっても「白くて目立たない歯」を手に入れるハードルは以前よりも格段に下がっています。もし古い銀歯が気になっていたり、新しく差し歯を作る際に見た目を重視したいと考えていたりするなら、自分の歯がCAD/CAM冠の保険適用条件に合致するかどうか、一度歯科医師に詳しく尋ねてみる価値は十分にあります。12万円や15万円といった自費診療のセラミックを検討する前に、保険の範囲内でどこまで理想に近づけるかを知ることは、賢い患者としての第一歩です。