長い治療期間を経て、ようやくドライソケットの激痛から解放された時、多くの人が「もう二度とあんな思いはしたくない」と心から願うでしょう。そこで湧いてくるのが、「一度治ったドライソケットは、また再発することがあるのだろうか」という不安です。結論から言うと、同じ抜歯窩が再びドライソケットになることは、基本的にはありません。一度、抜歯窩の底から健康な肉芽組織が盛り上がり、骨の表面を覆ってしまえば、骨が露出するというドライソケットの定義からは外れるからです。しかし、これは「もう何をしても大丈夫」というわけではありません。治癒の過程はまだ続いており、不適切な行動がトラブルを引き起こす可能性は残されています。歯科医院での治療が終わり、通院が不要になった後も、抜歯窩が完全に平らになるまでには数ヶ月かかります。それまでの間は、穴に食べかすが詰まりやすい状態が続きます。もし、詰まった食べかすを放置してしまうと、それが原因で細菌が繁殖し、局所的な炎症、いわば「感染」を起こすことがあります。これは厳密にはドライソケットの再発ではありませんが、痛みや腫れ、排膿といった不快な症状を引き起こし、再び歯科医院での洗浄や投薬が必要になる可能性があります。したがって、治療後も、抜歯窩の清潔を保つためのケアは非常に重要です。食事の後は、必ず優しく口をゆすぎ、穴に詰まった食べかすを洗い流す習慣をつけましょう。その際、歯ブラシや爪楊枝などで穴の中を直接つつくのは、治りかけのデリケートな組織を傷つけるため絶対にやめてください。また、将来的に反対側の親知らずなどを抜歯する際には、過去にドライソケットになった経験があるという事実は、歯科医師にとって極めて重要な情報となります。一度ドライソケットになった人は、体質的に、あるいは生活習慣的に、再びなりやすい傾向があるからです。事前にその情報を伝えることで、歯科医師は、より慎重な抜歯計画を立て、術後の管理についても特別な注意を払うことができます。ドライソケットの苦しみを繰り返さないために、治療後のケアを怠らず、過去の経験を未来の予防に活かすことが大切です。