親知らず抜歯後の激痛、ドライソケット。その治療法として、洗浄や投薬と並行して、近年注目を集めているのが「レーザー治療」です。レーザーと聞くと、何か特別な、あるいは痛みを伴う治療を想像するかもしれませんが、実際には患者さんの負担が少なく、痛みを和らげる上で非常に高い効果が期待できる、優れた選択肢の一つです。歯科治療で使用されるレーザーにはいくつかの種類がありますが、ドライソケットの治療に主に用いられるのは「低出力レーザー」です。これは、組織を切ったり削ったりする高出力レーザーとは異なり、主に生体の治癒能力を高める目的で使用されます。ドライソケットの治療におけるレーザーの主な効果は、大きく三つあります。第一に、「鎮痛・除痛効果」です。レーザーを患部に照射すると、痛みを伝える神経の興奮を抑える作用があります。これにより、あの耐え難いズキズキとした痛みが、処置直後から劇的に和らぐことが多く報告されています。痛み止めが効きにくいドライソケットの痛みに対して、即効性のある緩和効果が期待できるのは、患者さんにとって大きな福音です。第二に、「消炎効果」です。レーザー光には、患部の血行を改善し、炎症を引き起こしている物質の産生を抑える働きがあります。血流が良くなることで、酸素や栄養素が傷口に行き渡りやすくなり、炎症が早く鎮まります。これにより、腫れや赤みといった症状も改善に向かいます。第三に、「治癒促進効果」です。レーザー光は、細胞の活動を活性化させる力を持っています。傷を治すために必要な細胞の新陳代謝を促し、新しい組織の再生をサポートします。これにより、骨が露出した状態から、健康な肉芽組織が盛り上がってくるまでの期間を短縮する効果が期待できます。実際の治療は非常にシンプルです。抜歯窩を洗浄した後、レーザーの先端を患部に近づけて数分間照射するだけです。治療中に痛みや熱さを感じることはほとんどありません。このレーザー治療は、ドライソケットになってしまった場合はもちろん、難抜歯でドライソケットのリスクが高いと予想される場合に、予防的に照射することもあります。すべての歯科医院で導入されているわけではありませんが、もしこの治療が選択肢としてあるのなら、辛い症状を和らげ、回復を早めるための有効な手段として検討する価値は十分にあるでしょう。