口腔ケアに関心が高まる中で、デンタルフロスと歯間ブラシ、両方の名前を聞いたことがある方は多いでしょう。どちらも歯と歯の間の汚れを取るための道具ですが、それぞれに得意なこと、不得意なことがあります。この二つを混同したり、どちらか一方で十分だと考えたりするのは間違いです。それぞれの特性を理解し、自分のお口の状態に合わせて賢く使い分けることが、完璧な歯間清掃への鍵となります。まず、デンタルフロスの主な役割は、歯と歯が隣り合って接している「接触点(コンタクトポイント)」とその周辺の清掃です。健康な歯茎を持つ若い方や、歯と歯の隙間が非常に狭い場合、この接触点を通すことができるのは、基本的にデンタルフロスしかありません。糸状であるため、狭い隙間に滑り込ませ、歯の側面に沿わせて歯垢を掻き出すのに非常に適しています。歯周病が進行しておらず、歯茎が引き締まっている方は、まずはデンタルフロスを基本のケアとして取り入れるべきです。一方、歯間ブラシの出番は、歯と歯の間に、フロスだけでは清掃しきれないような、より大きな隙間ができた時です。加齢や歯周病の進行によって歯茎が下がってくると、歯の根元部分に三角形の隙間ができます。この隙間は、歯の側面が凹んでいることも多く、糸状のフロスだけでは汚れを取り残してしまう可能性があります。歯間ブラシは、小さな歯ブラシのような形状で、ワイヤーに付いたブラシが、この隙間の汚れを効率的に掻き出してくれます。特に、奥歯の根元や、ブリッジの下などを清掃するのに威力を発揮します。つまり、基本的な使い分けは「歯間の隙間の大きさ」で決まります。つまようじが入らないような狭い隙間にはデンタルフロス。つまようじがスカスカ通るような広い隙間には歯間ブラシ、と考えると分かりやすいでしょう。多くの場合、年齢と共に、あるいは歯周病の治療を経て、お口の中にはフロスを使うべき場所と歯間ブラシを使うべき場所が混在するようになります。前歯はフロス、奥歯は歯間ブラシ、といったように、場所によってツールを使い分けることが理想的なのです。どちらか一方だけを使うのではなく、両方の特性を活かす「ハイブリッドケア」こそが、歯科医がおすすめする究極の歯間清掃術と言えるでしょう。