医療技術の進歩に伴い失った歯を補うための治療法としてインプラントを選択する人が増えていますがそれと同時に将来的に他の病気で精密検査を受ける際に支障が出ないかと不安に感じる声も多く聞かれます。特に強力な磁場を利用して体内の断面を撮影する磁気共鳴画像検査いわゆるMRI検査を受けることができるのかという疑問は患者だけでなく医療従事者の間でも重要な確認事項となっています。結論から言えば現在の歯科治療で使用されている主流のインプラントであれば基本的には検査を受けることに問題はありません。しかしそこにはいくつかの条件や注意点が存在しすべてのケースで無条件に安全と言い切れるわけではないため正しい知識を持っておくことが不可欠です。まずインプラントがMRI検査において懸念される理由は主に三つあります。一つ目は強力な磁力によって口の中の金属が引っ張られ外れたり動いたりするリスクです。二つ目は金属が電磁波に反応して発熱し周囲の組織を火傷させるリスクです。そして三つ目は金属が磁場を乱してしまい撮影した画像にノイズが入るアーチファクトと呼ばれる現象が起き診断が困難になるリスクです。かつての歯科治療では磁性を持った金属が使われることもありましたが現在インプラント体として骨に埋め込まれるフィクスチャーと呼ばれる部分にはチタンやチタン合金が使用されています。チタンは生体親和性が高く骨と結合する性質を持つだけでなく磁石に付かない非磁性体あるいは極めて磁性の弱い常磁性体であるためMRIの磁場によって引き寄せられて移動したり抜けたりする心配はほとんどありません。発熱に関しても通常行われる検査の範囲内であれば体温がわずかに上昇する程度であり組織にダメージを与えるほどの熱を持つことは稀であるとされています。しかしながら注意が必要なのはインプラント体そのものよりもその上に装着される被せ物や入れ歯を固定するための装置です。上部構造と呼ばれる人工歯の部分に金銀パラジウム合金などの磁性を含む金属が使われている場合やインプラントを利用して入れ歯を安定させる磁性アタッチメントを使用している場合は対応が異なります。特に磁石の力で入れ歯を固定するタイプの治療を受けている場合その磁石部分が検査中に反応して強い力を受けたり画像の乱れを大きくしたりする可能性があります。また磁石そのものの磁力が検査機器の影響で失われてしまい入れ歯がくっつかなくなってしまうというトラブルも起こり得ます。このような特殊な装置が入っている場合には検査前に歯科医院を受診し一時的に磁石構造を取り外す処置が必要になることがあります。また検査が可能であるとしても画像の乱れについてはある程度覚悟しなければならない側面があります。チタン製であっても金属が存在する以上その周辺の磁場は乱され画像の一部が黒く抜けたり歪んだりするハイドロキシアパタイトやジルコニアなどの非金属材料であれば影響は少ないですが金属のインプラントがある場合口の周りの画像診断は難しくなることがあります。
インプラントを入れたままで磁気共鳴画像検査は可能か