唇のふちが荒れる、皮がむける、赤く腫れるといった症状が、セルフケアをしてもなかなか改善しない場合、それは単なる乾燥ではなく、何らかの皮膚疾患のサインである可能性も考えられます。自己判断で放置せず、専門医に相談することが重要です。まず考えられるのが「口唇炎（こうしんえん）」や「口角炎（こうかくえん）」です。口唇炎は唇全体に起こる炎症の総称で、原因は様々です。アレルギー性の接触皮膚炎（いわゆる「かぶれ」）もその一つで、特定の口紅やリップクリーム、食べ物、歯磨き粉、さらには管楽器のマウスピースなどが原因（アレルゲン）となって、唇やその周りに炎症を引き起こします。特に唇のふちに症状が強く出ることも珍しくありません。口角炎は、唇の両端である口角に亀裂や炎症が生じるもので、ビタミンB群の不足や、カンジダという真菌の感染などが原因となります。次に疑われるのが「アトピー性皮膚炎」です。もともとアトピー素因のある人は、顔の皮膚症状の一環として、唇の周り、特にふちの部分に乾燥や炎症を繰り返しやすくなります。また、唇のふちに小さな水ぶくれができて、ピリピリとした痛みを伴う場合は「口唇ヘルペス」の可能性があります。これはヘルペスウイルスの感染によって起こるもので、疲労やストレスで免疫力が低下した時に再発しやすいのが特徴です。水ぶくれは数日で破れてかさぶたになりますが、感染力があるため注意が必要です。これらの疾患は、見た目が似ていることもありますが、原因が異なるため治療法も全く違います。例えば、ヘルペスにステロイド軟膏を塗ると、かえって症状を悪化させてしまうことがあります。たかが唇の荒れと軽視せず、長引く場合や、水ぶくれ、強い痛み、ただれなどが見られる場合には、速やかに皮膚科を受診し、正確な診断を受けるようにしましょう。