「デンタルフロスが歯に良いことは、もう分かっている。でも、どうしても続かない」。これは、多くの人が抱える共通の悩みです。日々の忙しさの中で、歯磨きに加えてもう一手間かけるのは、確かに面倒に感じられるかもしれません。しかし、いくつかのコツを知るだけで、フロスを無理なく、そして楽しく生活の一部に組み込むことが可能です。ここでは、歯科医が挫折しがちな患者さんにお伝えしている、フロス習慣を長続きさせるための三つの秘訣をご紹介します。第一の秘訣は、「完璧を目指さず、ハードルを極限まで下げること」です。多くの人が「やるなら毎日、全部の歯を完璧にやらなければ」と気負いすぎてしまいます。これが、挫折への第一歩です。最初は、週に二、三回から始めてみましょう。あるいは、「今日は上の歯だけ」「今夜は特に汚れが詰まりやすい奥歯だけ」というように、範囲を限定するのも良い方法です。まずは、フロスを手に取るという行為そのものに慣れることが目的です。完璧な100点を目指すのではなく、継続できる20点を積み重ねていく方が、はるかに価値があります。第二の秘訣は、「最も簡単なツールから始めること」です。フロスには指に巻く糸巻きタイプと、持ち手付きのホルダータイプがありますが、挫折経験のある方には、迷わずホルダータイプをおすすめします。糸を指に巻く手間がなく、片手で手軽に使えるため、心理的な負担が格段に少なくなります。洗面所に立つのが億劫なら、リビングのテーブルにホルダータイプのフロスを置いておきましょう。そして、テレビを見ながら、あるいは本を読みながら、CMの間にさっと使う「ながらフロス」を試してみてください。歯磨きとは切り離し、リラックスタイムのついでに行うことで、面倒な義務から手軽な習慣へと意識を変えることができます。第三の秘訣は、「小さな成功体験を味わい、自分を褒めること」です。フロスを始めたばかりの頃は、歯と歯の間から驚くほど汚れが取れてきます。その「取れた!」という感覚や、フロス後の歯のツルツル感、翌朝の口の中の爽快感を、ぜひ意識して味わってみてください。そして、「今日もできた」と自分自身を認めてあげましょう。出血が減ってきた、口臭が気にならなくなったなど、ポジティブな変化に気づくことができれば、それが続けるための最高のモチベーションになります。
デンタルフロス習慣を挫折しないための三つの秘訣