保険適用の差し歯、特にレジンというプラスチック素材を使用したものは、自由診療のセラミックに比べて物理的な性質上、いくつかの弱点を持っています。この弱点を正しく理解し、適切なケアを行うことで、平均的な寿命とされる7年から10年を大幅に超えて使い続けることが可能になります。まず意識すべきなのは、レジンの吸水性と摩耗性です。レジンは微細な穴が開いた構造をしているため、食べ物の色素や細菌を取り込みやすい性質があります。そのため、食後はできるだけ早く口をゆすぐか歯を磨く習慣をつけ、プラークの付着を最小限に抑えることが重要です。ただし、このときに研磨剤が多く含まれた歯磨き粉を使用して強く磨きすぎると、レジンの表面に細かな傷がつき、さらに汚れがつきやすくなるという悪循環に陥ります。柔らかい歯ブラシを選び、優しい力で細かく動かすことが、差し歯の寿命を延ばす秘訣です。また、保険適用の差し歯の多くは土台に金属を使用しているため、歯と歯ぐきの境界部分が最も脆弱になります。ここに汚れが溜まると、金属の腐食を早めたり、差し歯の内部で虫歯が再発したりする原因となります。デンタルフロスや歯間ブラシの併用は、もはや必須と言っても過言ではありません。特に、差し歯を入れた歯の神経を抜いている場合、内部で虫歯が進行しても痛みを感じることができないため、気づいたときには手遅れというケースが少なくありません。1日に1回、夜寝る前の念入りなケアを一生懸命に継続することが、結果として将来の治療費を節約することに繋がります。さらに、噛み合わせの変化にも注意を払う必要があります。保険の素材は比較的柔らかいため、長年使用していると噛み合う面が削れて、特定の歯に過度な負担がかかるようになることがあります。これが差し歯を支える根っこの破折を引き起こすリスクとなるため、半年に1回は歯科医院で噛み合わせのチェックと調整を受けるべきです。もし就寝中に歯ぎしりをする癖があるなら、ナイトガードと呼ばれるマウスピースを作成し、物理的なストレスから差し歯を保護することも検討してください。1万円程度の初期費用で作った差し歯であっても、日々の丁寧な取り扱い次第で、20年以上持たせている患者さんも実際にいらっしゃいます。高価な素材を選ぶこと以上に、今ある差し歯をいかに大切に守っていくかという意識こそが、口腔の健康を維持するための最大の武器となるのです。
保険適用の差し歯を長持ちさせるための日常ケアと注意点