日々の診療の中で、差し歯の痛みを訴えて来院される患者様と向き合う際、私たちが最も重視するのは根管治療のクオリティです。差し歯がいわば「建物」であるならば、根管治療はその「基礎工事」にあたります。どんなに高価で美しいセラミックの差し歯を被せたとしても、その土台となる根管の中に細菌が残っていたり、密閉が不十分であったりすれば、数年後に必ずと言っていいほど痛みが発生します。差し歯が痛いという主訴で検査を行うと、過去の根管治療が不完全で、根の先端に病巣ができているケースが多々見受けられます。日本の保険診療の枠組みの中では、根管治療にかけられる時間や材料に制約がありますが、再発を防ぎ、差し歯を一生持たせるためには、ラバーダムというゴムの膜を使用して唾液の侵入を防ぎながら、ニッケルチタンファイルなどの最新器具を用いて精密に清掃を行うことが理想的です。痛みが出てから再治療を行う場合、古い差し歯を壊して除去し、さらに土台となる金属の柱を慎重に削り取らなければならず、これは土台の歯をさらに薄くし、破折のリスクを高めることになります。そのため、私たちは可能な限り初回の治療で完璧を期すことを目指します。しかし、残念ながらトラブルが起きてしまった場合には、CT撮影によって根の形状や病巣の広がりを3次元的に把握し、マイクロスコープで肉眼の20倍以上に拡大して、痛みの原因となっている細菌の巣を徹底的に除去します。患者様の中には、痛みがあるからすぐに抜いてほしいとおっしゃる方もいますが、自分の歯に勝る代用物はありません。たとえ差し歯であっても、適切な根管治療を施せば、再びしっかりと噛めるようになる可能性は十分にあります。差し歯が痛いと感じた時は、それを単なる不具合と捉えるのではなく、自分の歯を救うための再メンテナンスの機会だと考えてください。プロの技術と患者様の丁寧なケアが組み合わさることで、差し歯の痛みという困難を乗り越え、長期的な口腔の安定を勝ち取ることができるのです。
歯科医師が語る差し歯の痛みと根管治療の重要性